デジタル処理で再現された巨大なオゾンホール... 『オゾン・クライシス』
1998年・アメリカ制作
まあまあ料金並のB級映画...?
卑怯な手を使わず真面目に撮っている地味な作品
 この夏は連日35度を超える猛暑に見舞われた地元・京都... 今日はそんなクソ暑かった夏にふさわしい?災害パニック・ムーヴィー『オゾン・クライシス』をご紹介しよう。
 もっとも実際にはかなり以前からレンタル店の棚に並んでいるのをチェックしていた映画である。空にぽっかり空いた穴から噴射される熱波らしきものが都市を襲っているDVDのジャケット... なかなかそそられる。しかし、である。事前のネット調査ではほとんどといっていいほど情報が見つからなかった。それもそのはず、この映画は“劇場未公開”なのである。
 “劇場未公開=下らない映画”というのは誤った見方であるが、当たらずとも遠からじとも言える(どっちやねん!)。でもってこの『オゾン・クライシス』はどんな代物なのか?
 ある日空軍パイロットのレイサーに指令が出る。市の偉いさんの息子が運転するセスナ機が行方不明になったらしい。ヘリで現場に向かったレイサーは墜落した機体を発見するが、倒れていた青年達は墜落ではなく重度の火傷が原因で死んだようだ。そうこうするうちにレイサーも気分が悪くなり倒れてしまう... そんな折り海岸に大量のクジラが打ち上げられ海洋生物局のエリザベスは大忙し...。そしてオゾン層の権威、ソーン博士のもとに研究所のチーフ、パイクから電話が入る。どうやら巨大なオゾンホールが誕生し着々とロサンゼルスに近づいてきているようなのだ...。
 このDVDの謳い文句は“「ツイスター」「ボルケーノ」「ディープインパクト」「アルマゲドン」「パーフェクトストーム」... 全てを凌ぐ緊急事態をスペクタクルに描く衝撃作”である。そしてこういう地球規模の災害を扱った映画はどうしても“B級”に陥りやすい宿命を持つ(だいたいこれら映画を十把一絡げにしているところ自体がB級だが)。
 辛くも病院に担ぎ込まれたレイサーの婚約者はソーンの妹で市長の秘書を務めるジェーン。ジェーンから話をきいたソーンはセスナ機の青年達はオゾンホールから漏れだした強力な紫外線で失明、地上で焼かれてしまったという。またソーンはエリザベスにクジラは方向感覚を失って海岸に殺到したと説明、そこで知り合ったTV局の企画マン、ジョンにオゾンホールの危機を説く。
 実はこの映画、“「ボルケーノ」のジョン・コーベット主演”である。だがソーン博士を演じるジョン・コーベットは「ボルケーノ」では大量の負傷者を救護する恋人の東洋系女医に“働きすぎだ。早く帰ってこい”と言う青年事業家役でほとんど目立たない存在。「ボルケーノ」はかのB級風味満点俳優トミー・リー・ジョーンズをはじめとして出演者の奮闘が目立ったが『オゾン・クライシス』は無名の人ばかりの上に今イチみんな存在感がない。
 さてジェーンを通じて市長に危機をアピールするソーンだが、市長は環境問題を担当する部署COARの責任者シフレンの意見を尊重する、という。実はソーンとシフレンはその昔ともに働いた仲だがオゾン・ホールの危険度については大きく認識が食い違っているのだ。今回も方向感覚を失った大量の鳥が市庁舎に襲いかかるが、シフレンは危機はないと言い張る。やむを得ずソーンはジョンに頼んでTVで危機を取り上げてもらう。
 これで市街は大パニックに陥り略奪が横行。また事故が多発しエリザベスは命を落としてしまう...。このあたりが『オゾン・クライシス』の運命を分けたのだろうと思う。ロサンゼルスの地下に火山が!を出発点にして自由自在にパニックを演出した「ボルケーノ」とは違い非常に地味なのである。窮余の策として“気温の激しい上昇により毒虫が大量発生...”という手を繰り出すが気持ち悪いだけで今イチ迫力に欠ける...。
 事態はいよいよ収集がつかなくなる。研究所のパイクはソーンが以前開発していたオゾン層再生爆弾ORBの使用を進言する。深刻な事態を目の当たりにしたシフレンもついに折れ関係部署を説得してくれた。ソーンとORBを乗せた最新戦闘機はレイサーの操縦でオゾンホールを目指す。果たして人類は未曾有の危機を乗り越えることが出来るのか???
 オゾン層再生爆弾と来ましたか! このあたりは強引なB級らしくて潔い。でも捻りが足りないのは歴然とした事実。別に「ボルケーノ」と比較するのは趣旨ではないが、B級パニック映画としてもどうもパッとしない。これでは劇場未公開になるのも仕方ないだろう。それでも卑怯な手(突然人間が燃え出すとか、熱で建物が爆発し始めるとか)を使わず真面目に撮っているところは好感が持てる。そのあたりが一部の熱心なファンを惹き付けてやまないのであろう...。
 以上のようなところでまとめに入りたいと思う。この『オゾン・クライシス』、一般の人から見れば“レンタル料金、返せ!”と叫んでしまう、やっぱり劇場未公開のマイナー作品であろう。しかし一方B級映画が好きな人にとっては“まあまあ料金並のB級映画でしたな。結構でした”ぐらいの評価は下されるだろう...。
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