惜しまれて休刊した「FMfan」... これは最終号 “FMfan”
By 共同通信社
去る12月5日の発刊を最後に休刊となる...
ひとつの時代を築き、今その役割を終えた格調高きFM雑誌。
 このコーナー、実に久々の更新である。今日はつい先頃“最終号”が発刊され、惜しまれつつ休刊となってしまった雑誌『FMfan』について書いてみようと思う。
 70年代、まだ関西にFM局がふたつしかなかった頃。数種類のFM番組雑誌が次々と発刊された。多くの若者に支持された「FMレコパル」、2週間毎に発刊される他紙を尻目に大胆に毎週の発刊にチャレンジした「週間FM」、最後発のギャップを埋めるべく音楽雑誌的体裁で勝負した「FMステーション」... いずれも90年代中に姿を消してしまった雑誌達... そんな中で共同通信社編集の『FMfan』は唯一無二のFM雑誌として情報を提供し続けてきたのである。
 エアチェック。放送される番組をお金持ちはオープンリールテープ、一般人はカセットテープに録音する行為。当然そのためには何日の何時何分にどんな番組が予定されているかを事前に知っておく必要がある... 元々はクラシック音楽の愛好家達がレコードとしては発売されない貴重な音源、例えば有名な指揮者による来日公演の実況録音などを虎視たんたんと狙いキャッチする手助けをするためにFM雑誌は登場した。当然詳細な番組表が最大の売りであるが、補足的な情報として新しくリリースされるレコードの情報やコンサート情報、さらに国内外の最新オーディオ情報などが盛り込まれ紙面を飾っていたのである。
 私と『FMfan』の出会いは中学2年の頃に遡る。最初AMの深夜放送でDJのたわいないおしゃべりを楽しんでいた私は、ある楽曲('70s Pop Hits「ジェット」を参照)と出会い音楽そのものに志向を移した。本当に音を楽しむならやっぱ音質のいいFMやんけ〜!と意気がる私が、たまたま当時同じクラスになった友達(コバヤと呼ばれていたその男... 今、どないしとるんやろ?)から紹介されたのが『FMfan』だったのである。
 今から26年も前の話である。当時の『FMfan』はその生い立ちに沿って圧倒的にクラシック系の情報が多かった。隔週発売の表紙も大抵話題のクラシック作品のジャケットがあしらわれていた。故に後発で登場しポップミュージックを主体とした「FMレコパル」に若者は群がった(何を隠そうコバヤも「FMレコパル」に乗り換えた!)。だが。あの格調高い編集姿勢が中学生の私にはなぜか魅力的で、結局今日に至るまで『FMfan』とお付き合いを続けてきたのであった。
 印象深い記事はいろいろあったが、やはりオーディオ評論家・長岡鉄男氏によるレビューが心に残る。単に性能だけにとらわれず外見やそこに息づく設計思想など人間的な面からも装置を評価していく木訥ながら暖かい文章に感銘を受けることが多かった。後期には音楽評論家・伊丹由宇氏とギタリスト・鮎川 誠氏によるビルボード誌のヒットチャートを肴にしたコーナーが登場。特に年末から年始にかけて“今年の年間TOP100大予想大会”が行われ思わず没頭してしまった。その他著名なミュージシャンを毎号1人づつ、詳細なディスコグラフィ(しかもチャート記録付き!)とともに紹介する“スーパー伝説”、お笑いマンガで楽しみながらオーディオをクリニックする“オーディオ・バリュー・アップ大作戦”など、本当に質の高い編集で『FMfan』はここまでやってきたのである。
 しかし去る12月5日に発刊されたものを最終号として『FMfan』は35年半の歴史に幕を下ろした。確かに今のFMは見方によっては“音質の良いAM”になってしまったような気もする。そういった意味では“FM雑誌”そのものの役割が終わったとも言える。だが、だが、だが... とうの昔に番組表は見なくなったが、質の高い編集ゆえに購入し続けていた私のような人間はこれから何を頼りにしていけばよいのか? まるで目と耳を同時に失ってしまったような感覚... 同じような思いをしている方、いらっしゃるならメール下さい。